話題の漫画 彼氏彼女の事情
主人公の宮沢は学校の成績トップで運動神経も良く、顔も整っていて物腰も上品、男子からも女子からも「完璧だよね」と羨ましがられる存在。
しかしそれは彼女の演技であり、家では髪を乱雑にしばりジャージを着てごろごろしている。
小さいころから、褒められると、良い気持ちになり、褒められたい・もてはやされたい・目立ちたい、とだんだん見栄を張るようになって、外では完璧なお嬢さんを演じることに快感を覚えるようになり、そのためには徹夜で勉強するなどの努力を惜しまない。
このキャラクター設定自体もだが、全体的にコミカルなシーンが多く、主人公にとても好感が持て、楽しんで読めるのが魅力。
そんな彼女が出鼻をくじかれるのが高校の入学式。入試でトップを取って入学初日から目立とうと思っていたのに、トップは別の人間が取った。
それがこの先彼女の人生を大きく変える有馬くん。彼もまた""完璧""。
ここまで書くと、ただの「眉目秀麗の美男美女、家ではだらしないなどのギャップの要素アリの、コテコテの恋愛漫画か」と思われるかもしれないが、そう思うのはきっと最初の1〜2巻だけだろう。
この「彼氏彼女の事情」という漫画は、既存の少女漫画と比べてずば抜けて個性的で、キャラクターの人生をとても深く描いていると感じる人が多いと思う。
少女漫画ではなく、まるで有馬の人生を描ききった映画のようなのだ。
だんだん二人が惹かれあって恋愛要素もあり・・・と進んでいくのだが、
作者曰く、物語は「宮沢編」と「有馬編」にわかれていて、途中から有馬主体の漫画になる。
有馬の心の闇、なぜ「完璧な人間」になろうと思ったか、なぜ完璧でい続けなければいけなかったのか、が濃く深く展開される。
心の闇が深すぎて、途中で読んでいて苦しくなるのだが、最終回まで読んで「この作品に出逢えて、宮沢と有馬というキャラクターに出逢えて、よかった」と思った。
一巻では高校生だった二人が、最終話では二人の子供(娘)が16歳になるところまで描かれているのだ。しかもダラダラ余計なことを描いたり新キャラを出しまくったりして続いたのではなく、キャラクター達にとって必要な事しか描かれていない。二人の娘の存在までが、この漫画の中でとても重要な役割を持っているのだ。ここまで深く話を考えた作者がすごいと思う。
ぜひ全巻そろえて一気に読んでもらいたい作品。